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コラム(今月の言葉)|Column
「経験する自己」と「記憶する自己」

ダニエル・カーネマン著の『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』を読んでいる。テーマは、「認知的錯覚」だ。
認知的錯覚とは、直感的に信じてしまう認識の誤りのこと。私たちの誰もが犯してしまう認知的錯覚について実例などが語られている。私たちは日々多くの意思決定をして生きている。簡単な話でいえば、今日の夕飯は何を作るか、お昼は何を食べようかなど多くの場合無意識に決定している。たとえは、夕飯ならスーパーで何にしようかと探しているとそこにおいしそうに感じる魚の切り身があったので、今日は魚にしようという具合だ。今の体調は、カルシュウム不足だからと思っての判断でなく、直感的なのだ。

カーネマンは、それをシステム1とシステム2と命名している。
システム1は、素早く、努力なしに自動的に発動し、意識的に停止させることはできない。システム2は遅く、意識的に努力しないと起動せず、発動にエネルギーがいる。この速い思考と遅い思考の違いについては、多くの心理学者が25年にわたって研究してきた。
カーネマンは、二つのシステムの特徴を「気まぐれなシステム1、怠け者のシステム2」と言っている。そしてそれらは、私たちの中に存在する。

この本の中で「経験する自己」と「記憶する自己」の章があった。
「いま痛いですか?」という質問に答えるのは、「経験する自己」である。そして「全体としてどうでしたか?」という質問に答えるのが、「記憶する自己」となる。つまり、歯医者に行って治療してもらい、30分間の治療経験それぞれの痛みを感じているのは「経験する自己」だが、治療後、「全体としてどうでしたか?」と聞かれた時、「記憶する自己」が保存するのは、代表的瞬間だけなのだ。つまり、治療経験の全体像から感じた代表的記憶で判断する。あくまでも、瞬間的に判断している。

「経験する自己」を起動させるには、それぞれの経験を振り返るために意識的に行わないと発動しないように思える。つまりキャリアカウンセリングで、クライエントに対しての問いかけへのヒントがあるように思えた。
例えば、自分の人生は「価値のない人生」のようだと語ったクライエントがいるとしよう。これは、クライエントの「記憶する自己」が、自身の人生全体を振り返って感じたことが語られたのだ。それはもしかすると、人生の大半を幸せに生きていたとしても、後半に大きな挫折があった場合、あまりにも大きな挫折のために、幸せを打ち消してしまったためかもしれないのだ。
人は、「記憶する自己」によって左右されているようだ。

クライエントの人生の経験を丁寧に振り返る機会を提供することで、「価値のない人生」というラベルを別のものに変えることができるのではないだろうか。そのためには、カウンセラーは、クライエントが自分の人生を丁寧に振り返りながら語るには、どのように問いかけていけば良いかをカウンセラーが自問することから始まる。




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